山下秀康(愛知学院大, 超準解析), Nonstandard smooth path integrals and differential geometry
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経路積分への超準解析的アプローチについて、最近の私の研究を中心として
発表する。

経路積分は量子物理学において50年以上にわたって用いられている
手法で、Feynman-Kacの公式等の部分的な数学的正当化もなされている。
だが、経路積分はこの20年間に新たな側面から注目を浴びることになった。それは
多様体論(微分幾何・トポロジー)との関連からである。とくにAtiyah-Singer
の指数定理の影響力が大きい。80年代前半にAlvarez-Gaume等の物理学者によって
超対称量子力学を用いた指数定理の別証明が提案された。その「証明」には経路
積分が用いられていた。だが、そこで用いられた経路積分は現在もまだ数学的
に正当化されていない。私の最近の研究は、そこで用いられている経路積分を
正当化することを目標としている。

その正当化が難しい理由は2つある。一つは、それがユークリッド空間上ではなく
多様体上の経路の空間での積分であるということ、もう一つは、それが超対称性を
明示的に表現している経路積分だということである。Bismut等による確率論的
アプローチは前者の困難を乗り越えることができたが、後者の困難を解決する
見通しは立たない。発表では、超準経路積分の方法がその両方に対して有望であ
るという私の観測について述べる。
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